猫を拾って ~5.里親さんが見つかってから去勢手術前まで~
猫を引き取ってもいいと言ってくれたのは、妹の友達の友達だという女性だった。
私はもともと悲観的な考え方の持ち主なのもあり、インターネットなどを活用して不特定多数の人から里親になってくださる方を探す地震がなかったので、信頼のできる知り合いの人か、その知り合いぐらいの範囲で探したかったので、とりあえずは安心した。
ただ、条件としては去勢手術が終わっている猫なら飼えるということだった。
去勢手術は一度やってしまうともう二度と元には戻せないので、里親になってくれる方が現れたらその時に相談して決めようと思っていたが、これについては悩むまでもなかった。
これは相手の方にも事情があったので承諾した。
猫だけでなく、犬やウサギなどのペットを去勢、避妊するかしないでおくかは悩ましい。
どこも体に悪いところがないのに、わざわざ負担になるような手術をさせるのはかわいそうだし、なにより人間の勝手な都合のみでペットの生殖能力を奪い一代限りの命にしてしまうのには抵抗感や罪悪感がある。
だが、去勢するとマーキングや発情期がなくなるのは大きかった。
雄猫は大体1歳ぐらい(早いと8ケ月くらい)になるとマーキングをするようになる。
室内飼いではマーキングをされたら困ってしまうが、去勢した猫はマーキングをしなくなる。
特に、マーキングをする前に去勢をした猫はまったくマーキングをしないらしい。
そして、猫は発情期になると、とんでもない大声でひたすら鳴き続ける。
また、オスは基本的にメスと比べて活発で攻撃的であるが、去勢手術をするとすぐにではないがだんだんと大人しくなってきて飼いやすくなる。
先住猫が発情期を迎えたときはあまりのうるささに同じ部屋にはいられなかったので、発情期を抑えるためにも去勢手術をしないという選択肢は、猫には申し訳ないがなかった。
さらにいうと、たった1匹ですら里親が見つからなくてあちこち動き回ったのに、これで子猫が増えてしまったらもうどうしようもない。
それこそ多頭飼育崩壊になったら、善意のつもりが不幸な猫を増やすだけだと思うと、やはりやったほうがいいように思えた。
もちろん去勢手術は避妊手術にもデメリットはある。
かわいい飼い猫の2世誕生はなくなるし、一度行ってしまえばもう元には戻せない。
確率は低いが、手術がうまくいかなくて死亡してしまう可能性もないわけではない。
去勢をすると肥満になりやすくなり、雄猫は尿道結石になりやすくなるという問題もある。
それでも去勢や避妊をするのは人間にとって飼いやすいというのが理由なのは猫には申し訳なく感じるが、かわいそうだからと去勢手術を受けさせないで、外に放り出されて食べるものも寝る場所にも苦労して死んでしまうよりはまだましなように思えた。
去勢手術はこちらで行うことにしたのは、相手の希望もあったのだが、飼えもしないのに拾った人間として責任があると思ったのと、猫にとっては見知った場所のほうが手術後に暗線しなければらない時にストレスが少ないだろうと思えたのもあったけれど、それを口実に猫をもう少し自分のそばに置いておく時間がほしかったのも大きかった。
猫を動物病院に連れて行き、獣医さんに診てもらう。
拾った翌日のノミと寄生虫の薬だけでなく、猫はすでに3種混合ワクチンを打ってもらい、猫エイズと白血病に感染していないか検査をしてもらっていた。
3種混交ワクチンは以前先住猫が猫風邪になって目の調子が悪くなってしまったのでちゃんとやらなければいけないと痛感していた。
病気の検査は、動物愛護センターで「猫を飼っている人は去勢の有無よりも猫エイズや猫の白血病に感染していないかを重視するので、血液検査をしておくと里親さんが見つかりやすいですよ」とアドバイスされたからだった。
拾った時に猫はそんなに汚れておらず、けがもなく、目ヤニもついていない綺麗な顔をしていたので、感染症にかかっている可能性は低いだろうと思っていたが(猫を飼っている友人からは、元気そうに見えてもどんな病気を持っているかわからないため、念のため拾ってから1~2週間は様子を見つつ先住猫と隔離をしておいたほうがいいとアドバイスはされていた)、それでもやはり猫エイズと白血病の検査の時は緊張した。
結果は両方とも陰性だったので安心した。
そんなわけで、何回か病院に通っていたので、猫は獣医さんにも覚えてもらって、かわいがってもらえていた。
獣医さんに里親が見つかったので去勢手術を受けさせたいと言うと、猫の状態を診てくれて、「これなら去勢手術は受けれますよ。いつ手術しますか?」と手術ができる日を教えてくれた。
拾った時は小さかった猫は、もう4.6キロになっていた。