猫を拾って ~4.少しずつよくなる猫との同居生活~
自分の部屋で寝るのは一週間ぶりだった。
夜中に起こされるかもと思っていたが、目が覚めたのは6時ぐらいにおなかをすかせた猫に起こされた時だった。
疲労回復のために薬局で滋養強壮の効果がある漢方薬を買っていたのだが、それが眠りも深くなる効果もあるので寝る前に飲むといいと言われていたので、薬を飲んで寝付いてしまえば朝まで目が覚めなかった。
もともと一度寝付いてしまえばよほどのことがない限り起きない人間であり、眠りが浅かったのはいろいろ重なっていたのでストレスもあったのだと思う。
他にも問題と言えば、猫のトイレを部屋の中に置かなければならないので匂いが気になるが、猫の脱走防止のためには窓も戸も閉めておくしかない。
気がまぎれるかと思って最初は窓を開けておいてベランダに出れるようにしたのだが、ベランダから屋根に飛び乗り、さらには車の上に降りて外に自由に出れるようになってしまったので、窓は開けないことにした。
家の近くに交通量の多い道があり、昔そこで黒猫を交通事故で死なせてしまったので、外には出さないようにするにはそうするしかなった。
しかし、消臭スプレーを買ってきてもすぐに使い切ってしまうので、クエン酸を買ってきて水に溶かしてスプレーを作ったり、猫砂を多めにトイレに入れておくと多少臭いが緩和したが、一番はやはり換気だった。
そのため、自室にいるときにはケージに猫を入れて、空気の入れ替えをするようにした。
猫は狭いケージは好きではなく、外に出してくれと鳴き出してしまうので長い時間は入れておけなかったが、それでも換気をするのとしないのとでは気持ち的には大きく違った。
先住猫は屋根つきのトイレが気に入らないらしく絶対に中に入らなかったが、拾ってきた猫は屋根つきのトイレを普通に使うので、猫砂の飛び散るのが防止できたのはまだ助かった。
おかげで買ったものの出番のなかった屋根つきのトイレが日の目を見ることになった。
何の準備もなく猫を受け入れてしまい、猫も人間も勝手がわからなくて戸惑ったが、それでも少しずつ調子が合うようになってきた。
猫はあいかわらず元気が有り余っていて部屋中を駆け回ったり、外に出たがっては大きな声で鳴くので、苦肉の策としてリードを買ってきて、多少は気がまぎれるかと思って試しに使ってみることにした。
最初は当然だけどリードをつけることすら嫌がったが、それでもそれをつけたら外に出してもらえるということを学習したのか、だんだんすんなりとリードをつけさせてくれるようにもなってきた。
少しずつだけど、生活が整っていく。
焦っていたり困ってがむしゃらに動き回っているときほど空回ってしまい、なにもかもうまくいかないが、不思議なものでひとつ調子が良くなると他の部分でもうまくいき出すサイクルができるもので、この猫と一緒に暮らすのは大変だけど悪くはないかなと思うようになった頃、猫を飼ってもいいという人が現れた。